昨今の携帯電話端末、特にスマートフォンのカメラ機能の充実には目を見張るものがあります。
個人的にはスナップ写真程度ならiPhoneのカメラ機能で充分とも考えています。
ただ、この充分はスマートフォンのカメラ機能は素晴らしい、とイコールではありません。
いみじくもフィルム時代のレンズ付きフィルムと同じ感覚…誰でも被写体に向けてシャッターを押せばメモリーとしてそこそこの写真が撮れるます、と言う意味です。
実際にスマートフォンと一眼レフで撮った画像を比較してみると、全くポテンシャルが違う事がわかります。
絶景と呼ばれるような風景を撮ると、スマートフォンでも絶景が撮れてしまうので、身近のつまらないものを同じ構図からスマートフォンと一眼レフで撮影して、実際に比較してみる事にしましょう。
スマートフォンは個人所有のiPhoneXです。発売当初は定評のあったiPhone8を更にグレードアップした撮影機能が話題になりました。
一眼レフの方は、iPhoneXが不利にならないよう、ほぼ10年選手のNikonD7000。レンズも解像力を売りにしたようなレンズではなくTAMRONのB016Nにしました。16-300mm F3.5-6.3のいわゆる便利ズームと呼ばれるレンズです。
画角は極力iPhoneXの75度(35mmフィルム換算で28mm)に合わせてます。
この条件で、事務用の折り畳みの長テーブルにインスタントコーヒーの瓶と、市販のアイスモナカを置いて撮影してみました。
ピントはiPhoneXもD7000もインスタントコーヒーの瓶の蓋の手前側の角(画面上で一番下に位置する角)に合わせています。
一眼レフはハンディとして絞り優先モードで、絞り開放で撮っています。
先ずはiPhoneXの画像です。HDRではくノーマルモードでの撮影です。
パッと見、なかなかよく撮れている感じがすると思います。
メリハリのある写真…というか、この写真だけ見たらカメラにあまり詳しくない人は「スマホでこんな写真が撮れるのなら高いカメラなんて要らないじゃないか」と思うのもおかしくはないと思います。
次に10年落ちの一眼レフと、一眼レフ用レンズとしては決して高級な部類ではないレンズを組み合わせて撮った写真です。
モナカがややピンぼけなのは絞り開放で撮っているので、ピントを合わせた部分との位置関係(レンズからの距離)でボケてしまうのです。これは絞りを絞り込む事で同じようにピントを合わせる事ができます。
逆にこの機能を使ってピントを合わせたい場所以外をボケさせる事も可能です。
被写界深度などと言いますが、今回の記事は初心者の方向けなので詳しくは書きませんので、興味のある方は検索したり調べてみて下さい。
先ず、コーヒーの瓶とモナカの大きさの関係が全く違う事がわかります。
スマートフォンの画像はまるで巨大なビルを空撮したかのような広角で、モナカのパッケージの縦横の長さも、圧縮されて寸詰まりになってしまっています。
一方、広角撮影とはいえ一眼レフの写真は実際のサイズに近く写っています。
そして何より色味です。こんな目が疲れそうな木目がクッキリした事務机なんて存在しません。
スーパーなどで並んでいるインスタントコーヒーと見比べたら、実際の色はほぼ一眼レフの写真の色味だという事が理解出来ると思います。
一見、見栄えの良い画像が簡単に撮れる感じがするスマートフォンですが、実際は見栄えを良くする補正が思いっきり掛かっていて実像からはかけ離れているという事です。
細かい説明は省きますが、これは直径数ミリしかないレンズ、画素数は多いのに表面積の狭いセンサーを使っている事が原因です。
日本人は特にカタログスペックに弱いと言われてますが、単純に画素数=画質の良さではないのです。
ただし、スマートフォンは常に持ち歩くもの。
いつでもフィルム時代には考えられなかった高性能のカメラを持ち歩いているという事に変わりはありません。
旅のスナップや、ちょっとした記録ならスマートフォンは素晴らしいカメラ機能と言えます。
レンズ付きフィルムの登場で、90年代には常に鞄に忍ばせて事あるごとに写真を撮っていたような人からしたら、現代のスマートフォンの撮影機能は夢のようなアイテムでしょう。
ここはカメラ趣味の人しか立ち寄らないでしょうから、理解しがたいとは思いますがスマートフォンで済ますも、歴とした選択肢のひとつです。
適材適所でスマートフォンだって素晴らしいカメラなのですから。
ただし、レンズ、センサーのサイズをカメラとは比較にならない程、小さくせざるを得ないため、どんなに画像処理の技術が上がってもカメラを超える事はないでしょう。
寧ろ、画像の見栄えが良くなれば良くなる程、補正で作られたニセモノの画像という事が言えるのではないかと思います。