独眼流正宗

独眼レフを操る 下手っぴ写真愛好家の場末の毒舌ブログです。「頭の中に漠然とある感覚や印象を、気分や感情に左右される事なく、言葉や文字に置き換える時に、それらは初めて明確な意思や思考になる。」そのための自己反芻のようなモノでもあるので、興味のない方はスルーして下さい。

CCDイメージセンサの写真は今見ても色褪せない

デジタルカメラのセンサーは初期はCCDイメージセンサ(以下CCD)が上位でした。CMOSイメージセンサ(以下CMOS)は廉価版に用いられる安物センサーで、民生用デジタル一眼レフが登場した時は概ね何処のメーカーも610万画素のCCDを使っていました。

最終的には1000万画素を超えていましたが、安価に製造出来るが画質面で劣ると言われていたCMOSの高性能化で、コストの高いCCDを使うメーカーはなくなりました。

 

もうひとつイメージセンサーとしてCCDが消えた理由は、CCDでは610万画素の時点で、ほぼ頭打ち。これ以上画素数を上げても画像処理エンジンが処理しきれず、劇的に画質が良化する事はないと長年言われていました。 

 

 

f:id:muramasachang:20191218062641j:image

慈照寺 PENTAX ist-D(610万画素)JPEG無加工

 

つまりカタログスペックで販売促進出来ない。センサーが進化しないのは製品を売るメーカーとしては致命的です。

光学メーカーのカメラは、プロの過酷な現場で酷使されても壊れない堅牢さが売りです。タフなカメラでセンサーの進化が期待できなければ、新製品を出しても売れません。

 

CMOSのように画素数を上げれば画質に好影響があるセンサーならば開発のし甲斐がありますが、センサーを高画素化してもコストが上がるだけで画質はあまり良化しないCCDは、商品に起用するセンサーとして敬遠されてしまいました。

 

f:id:muramasachang:20191218063429j:image

鹿苑寺 PENTAX ist-D(610万画素)JPEG無加工

 

デジタル一眼レカメラ ist-Dと一緒に出た安い便利ズームで撮った写真群ですが、撮って出しでこの状態です。

ナチュラルな色味と奥行き感は現行の高画素CMOSを上回っていると、私は未だに思っています。

 

f:id:muramasachang:20191218063836j:image

金剛輪寺 PENTAX ist-D(610万画素)JPEG無加工

 

特に奥行き感と、暗い部分の潰れなさは、610万画素という「数値」からは考えられないような描写性能です。

 

私がアンチスペック写真愛好家である一番の理由は、CCDでの撮影経験が色濃く印象に残っているからです。

 

f:id:muramasachang:20191218064814j:image

松本城 PENTAX ist-D(610万画素)JPEG無加工

 

旅行中に慌ただしく撮った写真なので少しピンが甘いですが、黒塗りの板壁のディテール、背景の山など潰れずに良く描写されています。

 

f:id:muramasachang:20191218082457j:image

鹿苑寺 PENTAX ist-D(610万画素)JPEG無加工

 

撮って出しの時点でナチュラルな色味で、殆ど加工の必要がないのがCCDの長所です。事ある毎にRAW現像で実際の色味に近いよう補正しなくてはならない(目立つよう現実離れした色に変えてしまう人も多々いますが)現行のフルサイズCMOSより、ある意味では描写性能的に上である部分も少なくありません。

 

 

 

「ここに来れない人のために、見たままの景色や風景を、そのまんま写真で伝える事が写真家の使命であって究極の目標」

昭和のプロカメラマンさん達が口を揃えて仰っていた事です。

フィルムという経験則だけが頼りの時代に、何日、何ヶ月、場合よっては何年もかけて、渾身の一枚をモノにされてきたカメラマンさん達には本当に尊敬以外の言葉が見つかりません。

 

 

Instagramで画像を検索すると、人気の画像として表示されるものにナチュラルな色味のものは殆どありません。

大抵は、目立つようにゴテゴテに色調を弄り、ダイナミックレンジを上げまくった上に、シャープネスを上げる事で、遠近感が完全に失せてしまった画像ばかりです。

若しくは、少しでも人目に触れさせようと、無関係ハッシュタグを大量に載せている、迷惑極まりない自己顕示欲丸出しの自撮り写真か…。

 

f:id:muramasachang:20191219144614j:image

大正池(上高地) PENTAX ist-D(610万画素)JPEG無加工

 

正直、自分で撮った写真を見返している時、少し色褪せて見えるCCD時代の写真の方が、その時の記憶が鮮明に蘇る…そう感じるのです。

レタッチでゴテゴテに弄った画像を将来見返した時に、実際に見た光景とかけ離れた画像で、その時の記憶が蘇るでしょうか?

甚だ疑問です。

 

 

f:id:muramasachang:20191219145521j:image

鹿苑寺 PENTAX ist-D(610万画素)JPEG無加工

 

SNSの普及で、写真好き、カメラ好き、の趣味人が増えたのではなくいいね好き、反響好き、自己承認欲求を満たす目的の為に技術的に簡単になった写真趣味に飛びついている人が大多数だと思います。

 

良作ばかり載せていた投稿者も、フォロワーが少し増えて「いいね」が増えてくると、毎日投稿しなくては気が済まなくなり、駄作投稿が増えた挙句、より目立たせるためにレタッチ過多になっていったりします。

 

f:id:muramasachang:20191219152551j:image

安土城跡 PENTAX ist-D(610万画素)JPEG無加工

 

インターネット普及前の写真趣味は一部のコンテスト常連者以外は、自己完結するだけの趣味でした。

ちびまる子ちゃんの、たまちゃんのお父さん状態。身近な人にしか見せる機会がなく周りからはちょっと迷惑がられるのが写真趣味でした。

 

我々、古い写真愛好者は、記録する事や見せる事よりも、もしかするとファインダーを覗いてシャッターを押す行為そのものが好きなのかもしれませんね。笑

 

f:id:muramasachang:20191219152735j:image

安土城跡 PENTAX ist-D(610万画素)JPEG無加工

 

ナチュラルな色彩でなく、撮った時点で現実とは全く違うド派手な画像が撮れる機種が大売れしている背景には、自己満足の写真趣味ではなく、自己承認のための写真利用が目的のせいなのだろう…15年近く前のデータから写真を見返して、CCDイメージセンサの事を考えながら、そんな事に想いが及ぶ今日です。

 

f:id:muramasachang:20191220073521j:image

東寺 PENTAX ist-D(610万画素)JPEG無加工

f:id:muramasachang:20200818140741j:image

露出のみ補正

 

Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZF.2 (定価¥467,500)の立体感が凄いとか、描写力が凄いとかとネットにフラッグシップ機と併せた作例が出てても、当時10万以下で買えたカメラと実売5〜6万円だったレンズの組み合わせで撮った画像の方が「ぶっちゃけコストパフォーマンスの部分も含めて断然良くね?」と思ってしまうのです。

 

そして今、APS-Cサイズではなく、フルサイズでCCDイメージセンサが作られたら、どんなに凄い描写力なのだろうと、思いを馳せてしまいます。