独眼流正宗

独眼レフを操る 下手っぴ写真愛好家の場末の毒舌ブログです。「頭の中に漠然とある感覚や印象を、気分や感情に左右される事なく、言葉や文字に置き換える時に、それらは初めて明確な意思や思考になる。」そのための自己反芻のようなモノでもあるので、興味のない方はスルーして下さい。

Nikon Df が誘うオールドニッコールの官能的世界

Nikon Df の一番の利点は、Made in Japanのオールドニッコールレンズをそのまま使える事です。今でこそ、中古取扱店で5000円くらいから売られているレンズもありますが、発売当時はいずれも宝飾品と同じレベルの超高級品として売られていたレンズ達です。

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しかし、オールドレンズは誤解されている部分があるようです。

 

SNS等で#オールドレンズのタグで検索すると、完全に白飛びしている露出オーバーでピントの甘い写真を「作品」として堂々と載せている方がものすごく多いのです。

そしてそれが「味」や「やわらかい」と表現されて、大勢のフォロワーに支持されていたりします。

デジタル一眼レフやミラーレスで写真を始めた方は、シャッター速度を含めた露出をオートでカメラ任せにしてる方が多いのだと思います。

当然ながら、非AIレンズは自動制御の為の情報伝達をレンズとカメラの間でやり取りすることはありません。

AF、手振れ補正付きのAIレンズなら、絞り優先モードで開放で撮ってもカメラが露出オーバーにならないよう自動制御してくれますが、非AIレンズは制御してくれる筈の露出オーバーを、オーバーのままイメージセンサは読み取ります。そして現代のコーティングされたレンズとは比較にならないほど逆光に弱いレンズなので簡単にフレアが画面を覆います。

 

恐らく、そういった画像を作品として投稿されている方々は、F値は被写界深度以外をボケさせるための機能と勘違いしているのではないしょうか。

 

あの…はっきり言わせてもらえば、ピン甘、露出オーバーの写真なら現代のレンズでもマニュアルモードで白飛びさせれば幾らでも撮れますので。笑

そんなのはフィルム時代の、ただの「写真が下手な人」が撮った失敗写真です。

そのような写真を、旅の記録としてお父さんが撮ろうものなら、家族からは「旅の楽しい思い出を壊した戦犯扱い」で批難轟々だったものです。

 

 

写ルンです」レベルの、発色が悪く、露出をミスってモヤッとしてるだけの写真がSNSなどで味があると人気になり、セミプロ扱いの人もいるようですが、個人的には信じられないような低レベルの話です。

 

孤高の写真家、服部冬樹氏のように、ダゲレオタイプのような昔の技法に徹底的に拘って、特殊な印画紙や技術を用いて創造されている写真なら、その画質の荒れすらも拘りの表現の範囲です。

しかし、今ネットで「味」だの「やわらかい」だの言われ評価されている写真は、今のように撮れ高が即確認出来なかったフィルム時代に、下手な人が撮った写真にしか見えません。

 

Fuyuki Hattori - Wikipedia

 

 

キツい言い方になりますが、レンズのせいではなく、単に写真は過保護なカメラに撮らせて貰ってるような人が、甘やかしてくれないレンズを曖昧な設定で使って撮れた失敗写真を、古いレンズの味だと勘違いしているだけです。

そして、それを物を知らない人達がありがたがって評価している。

しかし、それらのレンズが作られた当時から、プロの撮る商業写真は常にカリカだったのです!

大事な時に、カリカリ、適正露出で撮れなくてプロを断念せざるを得なかった人がどれだけいた事か。

 

適切なセッティングで撮れば、オールドレンズだって現代のレンズと区別つかないほどの解像力と描写性能があるんです!

 

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Nikon Df + Nikkor-S Auto 50mm F1.4(手持ち撮影)

 

露出オーバーを「味」だと思って撮っている方は一度、その設定のまま露出補正をマイナス側にして撮ってみて下さい。そして現代の手振れ補正付きレンズの時は、手振れオフ、AFもオフにしてカメラも全てマニュアルで撮ってみて下さい。設定が近ければ同じような写真が撮れる筈です。

 

そしてお願いがあります!

 

光学技術は世界に誇る、日本の物づくりの際たるものでした。

露出オーバーを表現と言うのは自由ですが、あなた方の間違った使い方で、戦後の日本の発展の原点とも言うべき光学技術の結晶を、あたかも粗悪品か不良品のように喧伝し、誤解させるのだけは辞めて下さい!

 

 

 

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オールドレンズの真価は、MADE IN JAPAN の質の高さと、ガラスレンズによる発色の深み、作像の立体感や質感といった部分に特化していると思います。

現在販売されている、コシナCarl Zeissの高級単焦点レンズなどは、まさにオールドレンズの直系で、現代の設計と技術でオールドレンズ的なアプローチのまま現代のレンズを作っていると言えるのではないかと思います。

 

口径が小さくコーティングなども現代とは違うので逆光に弱い部分はありますが、それでもキレのある描写力はオールドレンズの魅力でもあります。

 

 

今後、少しずつ手持ちのレンズから、幾つか作例的なものを紹介していこうと思っています。