実は、筆者は非常に限定された被写体のために写真趣味をしていた為、長年「花」というものの撮影に興味がありませんでした。
必然的にマクロレンズも、機能の一部にマクロ機能があるズームレンズくらいしか所持していませんでしたが、撮影仲間が出来た事で花の撮影にも段々と興味が沸き、今では様々な花が咲く、それぞれの時期を心待ちにする程に。
人間、環境が変われば価値観も変化します。全く興味すらなかった植物でしたが、今では道端の草木に季節の移ろいを感じて、注視しながら歩いているのですから、変われば変わるものです。
そうなってくると、やはりマクロレンズ…Nikon的に云えばマイクロレンズが、欲しい!…となるのが人の常。
接写リング付きで程度の良さそうな出物があったのでオークションで入手してみました。
Nippon Kougaku Japan時代のMicro-NIKKOR-P Auto 1:3.5 f=55mmとM2接写リングです。
折角なので、季節モノの向日葵で実写テストをしてみました。掲載した写真は全てJPEGでLightroomで露光量を少し弄ったものがある程度です。
先ずは55mm単焦点として。
ゴミではなく上空を舞う何かが映り込んでます。
寄ってみることにします。
更に、M2接写リングでミツバチ君に寄ってみます。
当然の事ながらマニュアルフォーカスなので、蜜集めに夢中であまり動きが激しくないミツバチ君であればフォーカス出来るのですが、捕食者に怯える俊敏な昆虫の撮影は難しい筈です。
ただ、一言だけ言わせて頂くとすると…
マクロ楽しい…です。笑
もう昆虫ばかり接写して撮りたくなるほど面白い。知らなかった写真の楽しさを、このキャリアになって再発見です。汗
駅のホームの待合室で手持ち撮影したJPEG撮って出しですが歪曲収差がかなりきっちりと抑えられているのが一見して判ります。
解像力も当時としては群を抜いたレベルだったのも肯けます。
御岳山のレンゲショウマも撮ってみました。今年(2020年)から三脚使用禁止(午前9時から午後3時)になってマクロ撮影には不向きでしたが、森の妖精、森のシャンデリアと呼ばれる可憐な花は本当に撮っていて楽しかったです。
三脚で追い込めれば更に楽しい撮影になったと思いますが、ルールなので仕方ありません。
ルール変更を確認してないのか、狭い遊歩道を三脚と身体で完全に塞いで、通りたい人が待ってても、ずっと撮影に没頭している人も何人かいたので、アレでは本当に迷惑で禁止になるのも頷けますね。
55mmは単焦点このような風景にも威力を発揮します。JPEGで色補正は全くしていませんが、発色もメリハリが効いていて非常に良好です。
絶景や美しい花ではなく、脳内補正の効かない被写体にしてみました。通常の室内光で撮った輻射体温計ですが、発色、プラスチックの質感、共に申し分なしです。
Nikonのマクロレンズをmicro-NIKKORと呼称するのは、アメリカで開発されたマイクロファイルシステムで歴史的資料や書物を撮って、記録したり保管する為でした。
アルファベットやウムラウト程度しか使わないアメリカやドイツの当時の光学レンズはお粗末の一言で、漢字を判別出来るレベルではなかったそうです。そこで漢字をきちんと判別出来る高精度の記録用レンズとして開発されたのがNIKKORのマイクロレンズでした。
筆者が入手したのは昭和38年から販売されたオート絞り機構を備えた最初期のタイプで、このモデルは基本設計を変える事なく19年もの間販売され続ける事になる銘玉中の銘玉。
後継であるAi Micro Nikkor 55mm F2.8の開発が如何に過酷であったか?…は、フォトライフ - ニッコール千夜一夜物語 | Enjoyニコン | ニコンイメージングに詳しく記載されているので、興味のある方はこちらをお読み下さい。
60年以上前のレンズですが、その凄さには圧倒されました。Df は画素数こそ大した事ありません。それでも最高品質のフィルムがおよそ1000万画素相当と言われているので、細密さはフィルムを遥かに超えています。
しかし、そんなハンディを物ともせずにこれだけの描写力を発揮しているこのレンズは、日本の当時の光学技術の精度が如何に優れていたか?の証明と言えるのではないでしょうか?
Micro-NIKKOR-P Auto 1:3.5 f=55mm恐るべし!
そしてオールドニッコール恐るべしです。