独眼流正宗

独眼レフを操る 下手っぴ写真愛好家の場末の毒舌ブログです。「頭の中に漠然とある感覚や印象を、気分や感情に左右される事なく、言葉や文字に置き換える時に、それらは初めて明確な意思や思考になる。」そのための自己反芻のようなモノでもあるので、興味のない方はスルーして下さい。

あなたの花の写真。前ボケ、後ろボケと称して「被写体ボケ」してませんか⁉︎

秋になると、秋の花の代表格である彼岸花やコスモスがSNSに溢れます。花の写真は撮ってて楽しいですよね?

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Nikon Df × Micro-NIKKOR-P Auto 55mm F3.5

 

ここで質問です。あなたは花の撮影に何ミリのレンズを持って行きますか?

おそらく、カメラを始めてまだ日の浅い方…いみじくもレンズをあまりお持ちでない方は、50mm単焦点など所持している中で最も適していると思われるレンズを持っていかれると思います。

また、花の撮影が好きな方は、人気のタムキューことタムロン社製の90mmマクロ単焦点を買われる方が多いので、それを持っていくという人も結構いるかと思います。

 

しかし、人気の撮影地で巨大な望遠レンズで花の撮影をしている人を結構目にしませんか?

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Nikon Df × Micro-NIKKOR-P Auto 55mm F3.5

 

花の撮影は、密集して植えられていたり、群生しているような場所に行けない時は、手近な場所で撮影したりすると思います。

群生している場所での全景撮影なら、スマホで撮影してもそれなりに絶景になりますが、住宅地や道路の植栽などに咲いている花は難しい。何故なら撮りたい花の前後が人工の構造物だったりするからです。

当然、背景をボケさせて花を目立たせたい。そこで絞りを開く訳ですが、ここに落とし穴があります。

このような撮影シチュエーションで写真の出来栄えを左右するのが被写界深度す。

 

撮影時に絞りを開けば開くほど、ピント以外の部分はボケます。昨今、本来は暗い場所でシャッター速度を稼ぐための最小F値の小さな明るく高性能なレンズが、暗所の撮影をしない人にまで好まれるのは、このボケの為です。

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Nikon D7000 × lensbaby velvet56

 

ボケは便利です。しかし、前後にある人工の構造物を判別できなくなるまでボケさせてくれる反面、被写界深度がペラペラになり本来はしっかりと描写していなくてはならない花の殆どの部分までボケさせてしまいます

しかも、最近は猫も杓子もフルサイズセンサー。APS-Cより被写界深度が浅くなるのに、カメラのシャッター速度が1/8000などという高速な設定が可能なため、明るい日中に絞り優先モードで絞り開放で撮る方が非常に多い。

SNSなどには、厚紙数枚分の被写界深度以外の部分…いみじくも画面の殆どがボケてしまっている花の写真が非常に多く見受けられます。

 

ISOオートという便利な機能が、撮影者の技術低下を加速させている。 - 独眼流正宗

以前の記事にも書きましたが、過保護な失敗しないカメラの弊害です。

本来は真っ昼間の屋外で明るいレンズを絞り開放などで撮れるモノではありません。不必要なまでの高速シャッターとISOオート機能、オートホワイトバランスに画像エンジンの失敗させないための補正アルゴリズムで成り立っている無謀なセッティングなのです。

 

初心者はInstagram等のSNSで交流すると写真が上手くならない - 独眼流正宗

それでもSNSだとフォロワーさんから、ほぼ無評価で自動的にいいねがつくので、ずっと被写体ボケのまま投稿し続けている人も多く見受けられます。

特に女性のアカウントで、雰囲気の判る画像をアイコンにしてるような方は可哀想です。はっきり言えば、ピントが甘くB5でプリントしたら見れたモノではない筈の写真でも数千のいいねと、数百のコメントとリツイート。これでは自分が巧いのだと錯覚してしまっても不思議ではありません。

 

 

 

では、この問いかけに戻ります。

人気の撮影地で巨大な望遠レンズで花の撮影をしている人を結構目にしませんか?

 

写真でボケを生む方法は、明るいレンズで絞りを開くだけでなく、もう一つ方法があります。

望遠レンズを使う方法です。

望遠レンズなら被写界深度をしっかりと稼ぎながら、被写体以外の部分をボケさせる事ができるのです。

 

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Nikon Df × AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR(120mm f/9.0)

120mmで f/9.0まで絞っても背景はしっかりボケます。絞っているので被写界深度は花の大部分をカバーしているのが判ると思います。

センスの良い方なら筆者より数段素晴らしい写真が撮れる筈です。

実際、70-200mm f/2.8の大三元と呼ばれるレンズを使ってる人はかなり居ます。当然、大三元をお持ちの方は高性能な50mm単焦点だって持っている筈ですが、彼らの選択肢は望遠レンズ。望遠効果を用いて花全体にピントを合わせながら前後をボケさせるためです。

 

大三元クラスはレンズ一本で20万円のような世界なので、エントリークラスのカメラを使われてる方には縁遠い感じのレンズかもしれません。そんな予算があるならカメラ本体をグレードアップしたいという気持ちの方が強いと思います。

しかし作例を思い出して下さい。明るい屋外であれば f/9.0で良いのです。高額なレンズである必要はありません。APS-Cなら中古で5万円以下で買える16-300mmのような便利ズームでも良いわけです。勿論、50mm単焦点レンズなどと比べれば描写力は落ちますが、前後ボケ+被写体ボケ写真から一歩前に進む事ができる筈です。

 

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Nikon Df ×  SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG OS HSM

 

600mmクラスの超望遠域になると、機材が重くなり取り回しが大変になる反面、被写界深度を外れると盛大にボケてくれるので、更に花は撮り易くなったりします。


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Nikon Df ×  SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG OS HSM

そして超望遠レンズでは圧縮効果もプラスされます。それほど密集していない曼珠沙華圧縮効果で群生しているかのような写真に。

離れている被写体群は遠近感が少なくなるという効果を撮影に利用するもので、車のCMで有名になった「ベタ踏み坂」(江島大橋)や、コロナ禍の自粛要請中の繁華街に人出が多いといった偏向報道の際にも使われました。

 

 

質問掲示板などを見ていると、エントリー機のレンズキットからカメラを始めた方の最初の買い足しレンズに、50mm単焦点あたりを薦める人が多いようですが、筆者はAPS-Cなら広角から200ないし300mmまで撮れる便利ズームか、フルサイズ対応の200mmクラスのレンズをお薦めします。

前述のようにAPS-Cの16-300mmなどは値段の割に高画質ですから、買ったら旅行も一本で済みます。

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Nikon D7000 × 16-300mm F3.5-6.3 DiII VC PZD MACRO B016N(300mm f/6.3)

 

そして、フルサイズ対応の200mmクラスの望遠レンズならAPS-Cでは300mm相当の画角で盛大にボケる上に、カメラ本体をフルサイズに買い替えてもマウント方式を変えなければそのまま使う事が出来るのです。

キットレンズでカバーしている画角を単焦点で高画質にするより、カメラを始めたばかりの方は高倍率のズームを手元に置く方が、撮影を何倍も楽しめます。

今迄、全く撮ろうと思っていなかったような被写体にも興味が湧く…それが超望遠域のレンズを所持する効果でもあります。

 

 

写真をスマホに移してSNSに転送するだけでなく、タブレットサイズまで拡大したり、B5、A4サイズにプリントしてみるだけで被写界深度の浅さが起因のピントの甘さに気付けます。正直なところ、被写界深度ペラペラのボケボケ写真は拡大したら気持ち悪くて見られません。

少なくともサービス版プリントサイズにスマホで拡大してピンの甘さが目立つようであれば、それは失敗写真です。

スマートフォンの画像はサービス版の1/4サイズくらいの縮小表示。ピン甘でも被写体ボケでも縮小の密度で見れてしまうもの。

 

あなたの自慢の1枚。被写体ボケしてはいませんか?