lensbabyのVelvet56というレンズは、誠に趣のあるレンズである。その堂々とした鏡胴は中央部に僅かな膨らみを持ち、金属質な外観からは想像も出来ないほど上質なトルクの操作感は、数多の写真家を虜にする事であろう。(日本百名レンズより)
冒頭から、登山随筆家の深田久弥チックなで、だ・である調ですみません。
今回は、筆者のお気に入りのレンズであるlensbabyのVelvet56について書いてみたいと思います。
思えば、当ブログでNikon Df が初登場した時に装填されていたのがlensbabyのVelvet56でした。それ以前の愛機D7000ではオールドレンズ が使えなかったので、あまりフルサイズ用のレンズが手元に置いてなかったのも一因ですが、Df の試写に最初に装填したのが、お気に入りだったこのlensbabyでした。
ネット上の多くのレポートにあるように「ソフトフォーカス」と「ハーフマクロ」の二面性を持つレンズである事は有名ですが、大抵は絞ると結構シャープな写真が撮れる事には簡単にしか触れられていません。
この、ふんわり描写がVelvet56の一番のセールスポイントである事は間違いありませんが、その一面ばかりを全面に押し出して、作例の殆どが「作品」になってしまっていてるレビューも多いようです。作品として魅力的に撮れていても、作例として体を為していないとなかなか購入の判断材料にはならないと思います。
当ブログでは、筆者の写真の下手さを逆手に撮って、しっかりと面白みのない作例を載せつつ、f/4.0以上で絞った時のシャープさも含めた三面性を持つレンズとしてレポートしていこうと思います。(笑)
Nikon D7000 1/2500秒 f/2.8半 ISO100 圧縮掲載
Nikon D7000 1/640秒 f/2.0 ISO100 圧縮掲載
lensbabyの絞りのクリックは1.6、2.0、2.8、4.0、5.6…と大雑把に一段毎なのですが、クリックとクリックの途中で止めて撮影する事が出来ます。上段の写真はf/2.8と4.0の途中で止めて撮影しています。
先にも述べたように、lensbabyの一番の特徴は、絞りを開くと高次球面収差でソフトフォーカス風に撮れるという特性です。
高次収差というのは、目の悪い人がボヤけて見える現象。それを光学的に再現している…筆者は非常にざっくりですが、そんな感じで認識しています。少々視力の悪い人も、目を細めるとピントが合いやすくなってクッキリと見えますよね?Velvet56も同じで、絞る事でくっきりとした描写になるのです。
片側2車線の幹線道路の歩道の植栽でコオニユリが咲いていたので、カメラを三脚に固定してマニュアルモードで絞りを変えながら試写してみましょう。
適正露出になるようにシャッタースピードのみ都度調節します。試写のカメラはNikonDf でISOは100に固定。いつものようにJPEG撮って出しを無加工のまま圧縮して載せています。
1/4000秒 f/1.6
1/4000秒 f/1.6半
1/4000秒 f/2.0
1/4000秒 f/2.0半
1/4000秒 f/2.8
1/2000秒 f/2.8半
1/2500秒 f/4.0
1/800秒 f4.0半
f/2.8半からは、かなりくっきりとした描写になってくるのが判ると思います。ある程度、被写体まで距離があって露出オーバーやアンダーにならなければ、絞り解放でも滲んでボケボケになってしまうような事はありません。ただし露出が適正でないと、このレンズの難しさが突然牙を剥いてきます。
特に、後述のハーフマクロで接写している時は要注意です。他のレビューでは接写時にも芯がしっかりあるなどと書かれていたりしますが、筆者の目には自分で撮った写真でも、ふわふわに滲み過ぎていてピンボケなのか?ソフト効果なのか?の、判断が出来ないレベルの時があります。
Nikon Df 1/4000秒 f/1.6 ISO100 三脚使用
三脚固定して背面液晶で拡大フォーカスしてピントを合わせてますが、Df のシャッタースピードの上限である1/4000秒でも少しだけ露出オーバーで全体が滲んでしまっています。
このように、少し間違うと伝わりにくい自己満足写真になってしまうのがlensbaby Velvet56です。
筆者も特性と使い方を理解するまで、かなりの時間を要しました。果たして今も使い熟せているか?は、自分でもわかりません。
しかし、描写も色味もナチュラルで忠実。使い熟せさえすれば懐の深いレンズな事に相違なく、その試行錯誤が写真の腕を少なからず上げてくれるのではないか?と、考えています。
そしてVelvet56のもう一つの特徴は、最短焦点距離(レンズ先端より)13cmでの撮影が可能なハーフマクロ機能です。ただし、前述のように寄って撮る場合、絞りはf/2.8以下だと本当にピントが合ってるかも判らないほど滲みまくりになります。なので、基本的にマクロとソフト効果の併用はセンスと技術を伴わないと難しいと思っています。
魚眼レンズの写真が3枚続くと、退屈でうんざりするように、乱発すると写真を見る側の意欲を削がれてしまうように思うのです。
室内照明で単純なブツ撮りをしてみましょう。それぞれカメラの設定は弱アンダー気味の1/50秒 f/1.6 ISO100で、上から撮影距離は、約50cm、20cm、そして手前にピントが合うギリギリの距離で撮影しています。
誰の頭でも形をイメージ出来る350mml缶でもこのふわふわ感なので、これが一輪、一輪かたちが微妙に違ってくる花のようなものが被写体だと、見る側はかなり疲れてしまいます。一枚だけ、そのような写真があるだけなら、とても目を惹きますが…。
なにかと癖の強いlensbaby Velvet56ですが【前編】だけ読んで、このレンズ面白いっ!欲しい!って方は、買って損なしのレンズだと思います。
【後編】は、花の接写と、普通の56mm単焦点レンズとして風景などを撮って、そのポテンシャルを確認していこうと思います。
つづく