AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRは、巷では「小三元」などと呼ばれているレンズです。
広角端から望遠端まで最小絞り値がF4で一定させられるレンズで「F4通し」などと呼ばれているものです。
いわゆる標準ズームのカテゴリーでありながら24-120mmの焦点距離を持っていて、「F2.8通し」の「大三元」などと呼ばれているハイエンドズームレンズと違い、手頃な価格帯でより高倍率なところが嬉しいところです。
発売から約10年が経過していますが、その見た目も性能も古さを感じさせません。
現代のカメラはISOで感度が上げられるので、1/6000秒などで瞬間を捉えるような撮影シチュエーションを必要としない限りF4通しで事足りると思います。
なによりも24-120mmの焦点距離は旅行のコレイチレンズとして万能です。
ワイド端24mmがあれば、建造物や構造物は、よほど下がって写角を確保できないような立地に建っていない限り、大抵はファインダー内に収める事が出来ます。
(Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRー24mm f/5)
自然の風景も広角で切り取る方が、標準レンズの画角より写真的な広がりを演出出来ます。
(Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRー24mm f/22)
ズームレンズのもうひとつの利点は、ちょっと邪魔なものが写り込む時にズームで画角を整えられる事です。
(Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRー38mm f/10)
単焦点の描写力はとても魅力的ですが、写角が限られる時に、ズームが出来ると写し込みたくない柵や注意看板、カラーコーンなどをフレームアウトさせる事が出来てとても便利です。
広角域から始まるズームレンズで撮った写真のデータを見てみると、驚くほど広角端で撮った写真が少ない事に気付かされます。
(Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRー28mm f/7.1)
これは何らかの画角の微調整をズームで行っている紛れもない事実で、同じ画角の写真を単焦点で撮ろうとした場合、自分で撮影位置を前後して画角を作らなければならないわけです。車道に出なければならなかったり、柵があって近寄れなかったり、橋の上からだったりで物理的に調整不可能な場合も多々あります。
やはりそのような時にはズームレンズの有用性を痛感せずにはいられません。
そしてテレ端120mmは、ふいに見つけた花の撮影などにも充分対応出来ますので、観光メインの旅行などは本当にこれ一本あれば様々なシーンで活躍してしてくれる事間違いなしです。
(Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRー120mm f/4)
少しトリミングしましたが、路肩が非常に狭く、結構な交通量があり、普通に歩くのも少し怖さを感じるような溪谷沿いの街道で、法面に咲いていたユキノシタです。
レンズを変える事なくサッと120mmで捉える事ができました。
(Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRー120mm f/7.1)
(Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRー120mm f/9)
高幡不動尊に咲く紫陽花も撮ってみました。ボケ味は素直で、バックに朱塗りの寺社建築物が在るのがしっかりと判断出来ます。
シチュエーションによっては二線ボケになりますので、好みがありますからボケが汚いと仰る方もいますが、個人的にこのくらいのボケ具合は好きな範疇です。
幾つかシチュエーションを変えた作例を載せておきますので、拙い写真ながらボケ味の判断材料になればと思います。
(Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRー52mm f/4)
(Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRー82mm f/4)
Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRー98mm f/8)
(Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRー120mm f/8)
(Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRー70mm f/5)
(Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRー120mm f/5.6)
また、ナノクリスタルコートの恩恵も絶大です。
(Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRー75mm f/6.3)
逆光で陰影の強い写真を撮りたいときにはフレアやゴーストはかなり悩ましい存在です。この反射光対策で、撮りたい画角から泣く泣く逸れて撮った経験がある方も少なくないのでは?
ナノクリスタルコートは、反射率がかなり抑え込まれていて、光源をあまり気にする事なく狙いたい構図を切り取る事が可能です。
普段、オールドニッコールを好む筆者も、このナノクリ効果には脱帽です。
そして、皆さん大好きな玉ボケについても。
f/4なので盛大に…という訳ではありませんが、嫌味のない程度に玉ボケします。
(Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRーf/6.3)
玉ボケの為に絞りを開き過ぎて、肝心の花の方が被写界深度が浅く、全体的にピン甘になっている写真を結構見かける事があるので、ナノクリの逆光耐性と合わせて、この程度の方が使いやすいのではないか?とも思います。
手振れ補正は3.5段。普段、手振れ補正の無いレンズを多用する筆者には非常に良く効く印象です。しかし、ミラーレスの本体+レンズの超強力な補正に慣れた人には物足りなく感じるかもしれません。
ピント精度はやはり光学メーカー純正の強み。
(Nikon Df +AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRー78mm f/4)
ちょっとピンを悩みそうなこんな撮影でも、ストレスなくピント合わせをしてくれます。
手持ちでサッとレンズを向けただけの何気ないショットですが、とても正確です。
写真好きにとって、カメラの無い旅行は楽しさ半減。それどころか意義を感じられない人も居るのではないかと思います。
しかし、誰かと行く旅行を撮影のための日程にしてしまうのも失礼極まりない。
家族やパートナーに、旅行の度にレンズを大量に持ち運ぶ事を多少なりとも疎まれているのなら、迷わずAF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRをお薦めします。
旅の楽しさをスポイルせずに、写真趣味も満たす事が出来る逸品と言っても、過言ではありません。