独眼流正宗

独眼レフを操る 下手っぴ写真愛好家の場末の毒舌ブログです。「頭の中に漠然とある感覚や印象を、気分や感情に左右される事なく、言葉や文字に置き換える時に、それらは初めて明確な意思や思考になる。」そのための自己反芻のようなモノでもあるので、興味のない方はスルーして下さい。

オールドレンズと称して、絞りを適切に絞れてない写真が、SNSに溢れている件について

携帯電話やスマートフォンの撮影機能から写真に目覚め、一気にプロが使える程のクオリティを持つミラーレスカメラを買ったような人に非常に多く見受けられるのですが、絞りを開き過ぎで撮っている人があまりにも多すぎる気がします。

恐らく写真に目覚めた理由の大半が「被写体以外をボケさせる」事への憧れだったからではないか?と、思います。

数年前からスマートフォンでは合成でボケを演出できる撮影機能を売りにした機種が存在する事からも伺い知る事ができます。

 

絞りの甘さに関しては、実はカメラ趣味歴3〜4年という方々も、完全に勘違いをしているのではないか?と、疑いたくなるような人が、かなり多くいるように思います。

SNSが活動の主戦場だと、駄目な写真にもフォロワーの数に比例して「いいね」や称賛のコメントが付くので、それが間違った撮り方による結果であるとは思っていないようで、白トビ写真を何度も投稿されていたりするからです。

何度も言いますが、SNSでの評価やコメントは「必ずしも、それをしてくれた人が正しい判断が出来る上での評価」というわけではありません。

ぶっちゃけ、コメント欄とかを眺めていると、同じ趣味の女性とお近づきになりたいがために、いたって平凡な写真にヨイショしまくってる男性が非常に目に付きますし。

 

 

はっきり言えば絞りを開くというのは、暗所などで被写界深度を犠牲にしてでも撮影したい被写体がある時に使う飛び道具であり、適切に光量をコントロールできるプロの表現手段であって、決して安易にボケさせるためだけの機構ではありません。

 

フィルム時代は、ISO100が標準。70年代後半から主流になったISO400が所謂高感度フィルムで、特殊なISO3200などの超高感度(超高額)ネガフィルムなどは素人の使う物ではありませんでした。今のように天井知らずで感度を上げられるなんて夢のまた夢。

明るいレンズは本来は暗所でシャッタースピードを稼ぐためのものなのです。

 

スポーツを撮影するプロカメラマンが高額な大三元と呼ばれるF2.8通しのズームレンズを使うのは、シーンによってズームを動かすシチュエーションであっても、F値が通しならシャッター速度が一定に保たれるからです。

動きの速い選手をズームしたらシャッター速度が遅くなり、決定的瞬間がブレブレで撮れてしまっては仕事になりません。

つまり明るい場所であれば、静止している被写体に開放値を上げてシャッター速度を稼いで撮る意味は全く無いのです。

野鳥、本格派の撮り鉄、航空ショー好きの皆さんが、揃いも揃って高額な明るく巨大なレンズを使うのは、動きの速い動体を撮るための必要に迫られての事なのです。

 

そして、上級者が不必要とも思える超望遠レンズに接写リングをかまして花などを撮るのは、絞りを絞って被写界深度を稼ぎ、花全体にピントを合わせながら超望遠レンズ特有の前後のボケが欲しいからです。

ボケのために花の中心にしかピンが来ていない花の写真と、花全体にピントが合っていながらしっかりと背景がボケている写真の違いは、簡単に言ってしまえばこういう事になります。

絞りというのは被写体のためにあるものであり、背景のためにあるわけではありません。

 

ミラーレス一眼だとアダプター介してレフ機のレンズが使えます。フランジバックはレフ機より確実に短いので、それこそアダプターさえあれば様々なメーカーレンズが使い放題。そこで安くて高性能のオールドレンズに手を出す人が増えたのですが、ここが落とし穴です。

 

最近のカメラは殆どフルオートで良い塩梅にカメラが勝手に設定してくれます。

しかし電子接点が無いレンズは、測光すらしてくれません。つまり晴天の日中などに「絞り優先モード」で安易にボケさせる為に絞りを開くと、完璧に露光オーバーになり画面全体が白っぽくなってしまいます。 

 

 

 

三脚に据えて、絞り優先モードで一段ずつ絞り設定だけ変えて撮ってみました。

f:id:muramasachang:20200311153930j:image(NikonDf + NIKKOR-S Auto50mm F1.4)

 

f:id:muramasachang:20200311154046j:image(NikonDf + NIKKOR-S Auto50mm F2)

 

f:id:muramasachang:20200311154143j:image(NikonDf + NIKKOR-S Auto50mm F2.8)

F1.4からF2.8は誰が見ても白トビしていると思うのですが、こんな感じの写真を平気でSNSに上げている方が結構います。

 

f:id:muramasachang:20200311154217j:image(NikonDf + NIKKOR-S Auto50mm F4)

そしてF4で撮った写真。SNSのポートレートなどに溢れている感じのですが、これでもまだ適性ではありません。シャッター速度は絞り優先での、このカメラの限界である1/4000秒ですが、まだ光が強すぎて画面全体が白トビしている状況なのです。

最近カメラを始めたような方々は、このような写真をフィルムっぽいと言ってありがたがる傾向にあるようですが、フィルム時代であっても、これはただのヘタクソが撮った写真です。

 

20世期末に大ブームになったレンズ付きフィルムは、なんの調整も出来ないので、そのような露光オーバーの写真になる率が高かっただけで、それがフィルムっぽさなどでは断じてありません。

 

f:id:muramasachang:20200311155153j:image(NikonDf + NIKKOR-S Auto50mm F5.6)

 

f:id:muramasachang:20200311155208j:image(NikonDf + NIKKOR-S Auto50mm F8)


f:id:muramasachang:20200311155223j:image(NikonDf + NIKKOR-S Auto50mm F11)


f:id:muramasachang:20200311155135j:image(NikonDf + NIKKOR-S Auto50mm F16)

F5.6まで絞るとようやく空の色がしっかり出てきます。そしてF8かF11で、ようやくこの日の空の色に近くなってきた感じです。この2枚ならRAW現像で見たままの色味に近づけられる思いますし、仮に少し暗く撮れてしまったF16の写真でもRAW現像の持ち上げ方次第で、充分に使用可能な範囲です。

 

白トビして写ってないものはどうにもなりませんが、暗くなった画像は現像で浮かび上がらせる事が可能なので。

 

 

 

これまでのオートフォーカスレンズは、あなたがボケのために、かなり無謀に絞りを開いた設定にしていても、カメラがシャッター速度を上げまくる事で白トビしないように制御してくれていただけで、同じような感覚でオールドレンズを絞り優先モードで絞りを開いて撮ると、自動測光で制御してくれないので白トビ写真が撮れるだけなのです。

本来、経験則がなく、カメラ任せで写真をカメラに撮って貰っていて、それが白トビしている事すら判断できないような人は、電子接点の無いマニュアルフォーカスレンズに安易に手を出すべきではないと思います。

 

どうしても使ってみたいのであれば、露出計を買って被写体への適切な露出というものを調べたり、現在使っているレンズに付け替えて同じ被写体を狙い、カメラが同じF値で推奨する適切な露出時間(シャッター速度や露出補正の±)を確認しながら、きちんとした設定を把握しながら学んでいく事をお勧めします。