カメラのレンズは、大三元とかヨンニッパ(400mm f/2.8)、ハチゴロー(800mm f/5.6)など独特の呼ばれ方をするレンズがあります。大抵は超高性能ズームレンズや超望遠単焦点につけられる愛称ですが、例外もあります。このタムキューなどは正にその代表と言えるのではないでしょうか?
iPhoneで撮影
タムキューはTamronの出している90mm単焦点マクロレンズの略称です。取り立てて高価なレンズではありませんし、解像が特に優れている事もないのですが、トロっとふわっとな独特の描写が花の撮影などに適していて、愛好家から絶大な支持を受けているレンズです。
今回は、現行モデルではなく二代前の SP AF90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 (Model272EN II)をお借りして使ってみました。
AFが元からなのか、故障ぎみなのか迷子になる事が多いので全てマニュアルフォーカス、そしてマニュアル露出モードでの撮影です。
昭和記念公園のキバナコスモスのように、群生している花においては、背景のボケが好きな人には堪らないだろうな…という感じのトロけ具合。被写体を埋もれさせる事なく切り取れるので使い勝手が良いです。
御近所の植え込み写活ですが、ムラサキツユクサの接写においてはf/11.0まで絞っても、ごちゃごちゃとした背景をうまく整理してくれています。
放置されて伸び放題、生え放題になって道路まで飛び出していた畑のミニトマト。発色もナチュラルで色味の調整のために何度も露出を変えて撮り直したりしなければならないような事もなかったです。
人工の構造物もしっかりと描写してくれています。タムキューは雰囲気重視で解像はイマイチというのがレンズマニアの定説ですが、描写が素直なのでメリハリの効いた画面になり、自然なボケ味の対比的に解像も実際より高く感じます。基本設計がしっかりしているのでしょう。一部のレンズのようなあざといボケ味みたいな癖がないので、肉眼で蛇口を注視した時のような自然な見え方はとても好感が持てます。
シオンもカタバミも実に自然な発色で撮れています。シオンはピン位置を変えて何枚か撮ってみましたが、ピーキーなレンズだと汚くなってしまいがちな前ボケも穏やかで上品な仕上がりです。
日陰に咲いていたマーガレットコスモスも良い雰囲気です。10年以上前のレンズなので、最近のミラーレスの派手すぎる色合いに照準を合わせた設計でないのかもしれませんが、とても使いやすい。フワトロに興味がない基本ローキー寄りの筆者ですが、過不足なく使えると感じました。
キンエノコロ(ねこじゃらし)とコリウス(キンランジソ)は逆光で。わさと光源を撮ろうとしない限りフレアやゴーストは簡単には発生しません。手持ちでの撮影ですが、これだけ明るいとシャッター速度が稼げるため、手ブレ補正などがなくてもしっかりと解像しています。
こうして色々と撮ってみるとボケが穏やかで、綺麗なのでとても撮影しやすいレンズだとわかりました。フワトロのような感想が多いですが、筆者的にはメリハリといった表現の方がしっくりきます。
シオンを撮っている時に感じたのですが、適度に画面を整理してくれていながら、なにが映り込んでいるのかよくわからない…といった感じのボケ方ではないので、とても見やすい写真に仕上がります。
花の撮影に大人気という理由は撮ってみると納得です。被写体と脇役を明確に分けて撮れてくれるのでとても楽しいレンズでした。
このページの注釈のついていない写真は全てNikonDf にTamron SP AF90mm F/2.8 Di MACRO(272EN II)を装着して撮影したものです。